
ビジネスにおいて、コミュニケーション力は非常に重要なスキルです。
しかし、コミュニケーションは単に話すことや聞くことだけではありません。
相手の心理状態や認知プロセスにも配慮しなければなりません。
そこで、この記事では、ビジネスに役立つ心理学の基礎知識と実践方法を紹介します。
ビジネスコミュニケーションにおける認知心理学の役割とは?
認知心理学とは、人間の知覚や記憶、思考や判断などを研究する学問です。
認知心理学はビジネスコミュニケーションにどのように関係しているのでしょうか?
それは、以下のような点で効果が期待できるからです。
- 相手の認知プロセスやバイアスに配慮してメッセージを伝えることで、誤解や摩擦を減らし、信頼関係を築くことができる。
- 自分の認知能力や限界を把握して自己管理することで、ストレスや疲労を軽減し、パフォーマンスを向上させることができる。
- 認知心理学的な視点で自分や相手の行動や言動を分析することで、問題解決や意思決定に役立つインサイトを得ることができる。
認知心理学で学ぶビジネスコミュニケーションの3つのコツ
では具体的に、認知心理学から導き出されたビジネスコミュニケーションに役立つ3つのコツを紹介しましょう。
1. チャンク化やストーリー化などのテクニックを使って相手に伝わりやすいメッセージを作ろう
人間は一度に処理できる情報量に限界があります。
そのため、多くの情報を一気に伝えようとすると、相手は混乱したり忘れたりする可能性が高くなります。
そこで有効なテクニックが「チャンク化」です。
「チャンク化」とは、情報を意味的なまとまり(チャンク)に分けて伝える方法です。
例えば、「0123456789」という数字列は10個の情報として認識されますが、「012-3456-789」というようにハイフンで区切ると3個の情報として認識されます。
このようにチャンク化することで、相手は情報を簡単に記憶したり理解したりすることができます。
また、「ストーリー化」というテクニックも有効です。
「ストーリー化」とは、情報を物語の形式にして伝える方法です。
例えば、「この商品は高品質で低価格でエコロジーなんです」というように特徴を羅列するよりも、「この商品はある日、山田さんというお客様からご注文いただきました。
山田さんは品質にこだわる方で、価格も安いものを探していました。
そして、この商品を使ってみたら、驚くほど満足されたんです。
それはなぜかというと、この商品はエコロジーな素材で作られているからなんです」というようにストーリー化する方が、相手は興味や感情を持って聞くことができます。
2. 確信バイアスや錯覚的相関などの思い込みを避けよう
人間は自分の信念や期待に沿った情報を選択的に受け入れたり、無関係な事象の間に因果関係を見出したりする傾向があります。
これらの傾向は「確信バイアス」や「錯覚的相関」と呼ばれる認知バイアス(思考の歪み)の一種です。
認知バイアスはビジネスコミュニケーションにおいても問題を引き起こす可能性があります。
例えば、
- 自分の意見や判断が正しいと確信して相手の反論や異論を無視したり否定したりする
- 自分や相手が成功した時は自分の能力や努力に帰すが、失敗した時は外的要因や運に帰す
- 自分や相手が好きな人やグループに対して肯定的な評価をし、嫌いな人やグループに対して否定的な評価をする
これらの行動はコミュニケーションの障害となり、信頼関係や協力関係を損ねたり、問題解決や意思決定を誤ったりする可能性があります。
そこで、認知バイアスを避けるためには、以下のような対策が有効です。
- 自分の意見や判断に自信がある場合でも、相手の視点や根拠を尊重して聞くこと
- 自分や相手の成功や失敗に対して、客観的なフィードバックや評価を行うこと
- 自分や相手の好き嫌いに関係なく、公平で公正な態度で接すること
3. フレーミング効果やアンカリング効果などの影響を利用しよう
人間は同じ情報でも表現方法によって受け取り方が変わることがあります。
これは「フレーミング効果」と呼ばれる現象です。
例えば、
「この商品は90%以上のお客様に満足いただいています」という表現と
「この商品は10%未満のお客様に不満を持たれています」という表現では、
前者の方がポジティブな印象を与えます。
このようにフレーミング効果を利用することで、相手に望ましい反応や行動を促すことができます。
また、「アンカリング効果」という現象も有効です。
「アンカリング効果」とは、最初に提示された情報(アンカー)が後続する判断や評価に影響を与える現象です。
例えば、
「この商品は通常10万円ですが、今だけ5万円で販売しています」という表現では、
「10万円」というアンカーが「5万円」という価格を安く感じさせます。
このようにアンカリング効果を利用することで、相手に有利な条件や提案を受け入れさせることができます。
まとめ
ビジネスコミュニケーションでは、認知心理学的な知識やテクニックを活用することで、相手と良好な関係を築き、目的達成に近づくことができます。
本記事では、
- チャンク化やストーリー化などのテクニックを使って相手に伝わりやすいメッセージを作ろう
- 確信バイアスや錯覚的相関などの思い込みを避けよう
- フレーミング効果やアンカリング効果などの影響を利用しよう
という3つのコツを紹介しました。ぜひ参考にしてみてください。